おしらせ
このブログはルピナスの書く小説を押し込めたブログです。主に短編で、時に二次小説を含むかもしれませんブログ内の文章および画像は、許可を出した時以外は転載・転写・複写・配布などは禁止です。よろしくお願いします
新連載「シェルティーとヒナの青い空」は、ブログ友達すずなちゃんのオリジナルキャラクターを許可を得てお借りして描いています。よってキャラクターの著作権はすずなちゃんにあります。
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シェルティーとヒナの青い空 は、すずなちゃんの書くエル・ティリアとは別物になります。内容や世界観は繋がっておりません。管理人独自の勝手な妄想ですwあしからず。
byルピナス
*次回第6話は、6/15up予定です
ビターバレンタイン 2話 [ビターバレンタイン 完結]
哲に彼女が出来たなんて、聞いてなかった。
「それって、あれじゃん? 大学の後輩とか? バイト先の~とかじゃないの? 哲の事だからさ、どうせ頼まれて断れなかったってヤツだよ、きっと」
リビングのソファに座っていた勇喜が答える。
「ん~、それは有り得るんだけどさぁ・・・」
それにしては、妙に楽しそうだった気がするんだよね。
「そんな事よりさ、葵・・・・・・そんなに板チョコ買ってきて何すんだよ?」
勇喜が、不思議そうな顔でテーブルの上に視線を向けた。
勇喜は、哲の従弟で家が近所。まだ中学生だけど、ちょっと生意気。
「ああ、これ? 今からチョコレートを作るの。バレンタインの試作品」
「おおっすげぇ。葵、お菓子作れんの?」
「たぶん」
「・・・・・・たぶん?」
勇喜の顔色が変わった。
「・・・・・・まさか、俺に試食させるつもりで呼んだんじゃ・・・?」
「えへっ」
「えへっ、じゃねぇっ!」
「大丈夫だよ。チョコレートは初めてだけど、お菓子は作ったことあるし。板チョコ溶かして固めればいいんだから。簡単でしょ」
「・・・そうなのか・・・そうかなぁ・・・・・・」
勇喜は渋い顔で唸る。
「大丈夫! 大丈夫! 本も借りてきたから。さ、初めよ」
私は、不安そうにする勇喜をよそにチョコレートを刻み始める。
「えぇっと、刻んだチョコレートをボウルに入れて湯銭にかける・・・そして、テンパリングをし・・・テンパリング!? って何?」
まずい、イキナリ躓いた。
「葵~、本当に大丈夫かぁ? なんなら、俺の友達に上手いヤツいるから連絡してやろっか?」
テレビを見ながら勇喜が言った。
「大丈夫だよ~。作業にちょっと手間取ってるだけだって」
とか言いながら、本当は、ちょっとそうして欲しいとか思ったりした。
「ふーん・・・まあ、いっけど」
最初だから、失敗は当たり前。何度も試作して美味しいチョコ作ればいいんだもん。
その為に材料いっぱい買ってきたんだから。
「よしっ、頑張るぞっ!」
私が気合いを入れた、その時。
ピンポーン――
チャイムが鳴った。
誰だろう? お届け物かな?
「はーい。今、開けまーす」
「こんにちはー」
「哲!?」
聞こえてきたのは哲の声で。私は急いで玄関を開けた。
「こんばんは、葵」
「どうしたの? 今の時間ってバイトじゃない?」
「ああ、今帰り。そこのコンビニでプリン買ってきたから一緒に食べようかと思ってさ、入っていい?」
そう言った哲の手には、コンビニの袋がぶら下がってた。
「え? あ、うん。どうぞ・・・」
あっ、チョコレートの材料がっ。
「あれ? 葵、チョコレート作ってたの? 甘い香りがする」
バレちゃった。ナイショにして驚かそうと思ってたのに。
「う、うん、まあね。でも、なかなか上手くいかなくて・・・えへへ」
「そっか、頑張り屋さんだな、葵は。ほい、ご褒美」
哲がくれたプリンは、私の大好きな生クリームの入ったカラメルプリンだった。
哲が来たから、チョコレート作りは休憩。
3人でリビングに座ってプリンを食べた。と言っても、2個しかなかったから哲は食べずに勇喜が食べた。
「そういえば、哲さ? こないだの日曜日、女の子と一緒だったって?」
「っっっ!? ・・・・・・なっ、急に何言うんだよ」
勇喜の突然の質問に、哲は飲んでた紅茶を噴出した。
もしかして、動揺してる?
「分かりやすすぎだろ・・・誰? なぁ、なぁ、誰だよ?」
「誰でもないよ。その日は大学でゼミの活動してたから街には行ってないし。人違いだよ」
「ふーーーーん・・・・・・」
・・・そっか、そうだよね。
勇気は怪しい目付きで哲を睨んでたけど、私は哲の言うことを信じる事にした。
だって、哲が私に隠し事なんてするわけないし。
そう思ったら、なんか体が軽くなった気がした。
<つづく>