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byルピナス
*次回第6話は、6/15up予定です

ビターバレンタイン 1話 [ビターバレンタイン 完結]

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 ダークブラウンに真っ赤なリボンをかけた、ハート型オブジェ――。

 それは、女の子を戦闘態勢にする為のバレンタインカラー。


 でも、私には、何の効果もないけどね。

 だって、現在進行形の恋人や猛烈に恋人にしたい人なんて、いないから。


*******


 ――試食してみませんか? 新商品のチョコレートで、カナダ産の上質なカカオをふんだんに――

 バレンタインカラーの衣装を着た綺麗なお姉さん達が、声をかける。


 街中がチョコレート色に染まるイベント。
 バレンタイン。




 私は、CDショップの帰りに少し遠回りをして街中をぶらついていた。



「バレンタインかぁ・・・」

 なんとなく呟いたら、幼馴染の哲(テツ)の顔が浮かんだ。

 1歳年上の21歳で、大学生。

 哲には毎年、義理チョコというか友チョコというか・・・・・・恒例の年賀状みたいなチョコレートを欠かさずあげてる。





 けど・・・・・・そろそろネタ切れかも。



 
 今年はどんなチョコにしよう?

 ・・・・・・・・・・・・そういえば、去年はどんなのだっけ?






 私は、バス停に向かって歩きながら考えた。

 あんまり拘りすぎると予算がオーバーしちゃうから、その辺はそこそこで。

 でも、喜んでもらえないと意味がないから、工夫しないとね。



 考えながらキョロキョロしていたら―― 



 小さな赤いハートがいっぱい宙を舞ったショーウィンドウが目に留まった。

「あっ! このお店可愛いっっ!」

 ディスプレイに惹かれて扉を開ると――店内は、チョコレートを抱えた女の子でいっぱいだった。 


 うわぁ、混んでるし・・・・・・。

 一瞬、引き返そうか迷ったけど、でもせっかく入ったんだから見ていく事にした。


 女の子が一番群がってるのは、このお店オススメの高級トリュフチョコレートらしい。

 チラッと値札を見る。

 1箱4個入り2500円・・・・・・たかっ! 4個でっ!? 高すぎでしょっ!

 でも、一番売れてるんだよね。

 そんなに美味しいのかなぁ。ちょっと気になった。

 とりあえず、気になったチョコレートを味見用に購入して、お店を出た。


「ふぅ・・・・・・それにしても混んでたなぁ」


 買ったのは、金色パッケージのコインチョコと、一番人気の高級カカオのトリュフチョコ。

 結局買っちゃった、一粒だけだけど・・・・・・家に帰ってから、ゆっくり味見しよう。

 チョコレートに合わせてラッピングも考えなくちゃ。


 私は、またバス停に向かって歩き出した。




 すると――

「あれ? 哲・・・・・・?」
 
 バス停が直ぐ目の前に見えてきたとき、哲らしき人影が視界の隅を横切った。


 
 今の哲だよね?


 私は、哲らしき人がいた方へと向きを変える。





 いたっ! やっぱり哲だ。

 こんなところで何してるんだろう? 今日は大学で用事があるって言ってたのに・・・。


 そう思って声をかけようとした、次の瞬間――

 私の体は固まった。


 お、女の子!?




 まさか・・・・・・もしかして、彼女・・・・・・。





 一人だと思っていた哲は、茶色い髪の女の子と一緒に楽しそうに歩いていた。







<つづく>
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